4ステップでわかる親御さんのためのお子さんの就労支援ガイドです。
ステップ1 就労継続支援A型・B型・就労移行の違いと、最初の相談先の選び方
ステップ2 就労支援は親だけで相談OK 初回相談で聞かれること・準備チェックリスト
ステップ3 就労継続支援B型の選び方 見学で確認しておくと安心な10のポイント
ステップ4 相談先で迷わないために 親子で使える“伝え方のヒント”と支援のつなげ方
※本記事は主に、利用を検討するご家族(保護者)の方向けに書いています。
ご本人が読んでも負担にならないよう、「急がない」「責めない」を前提にまとめています。
「働かないと…」と焦るほど、話が進まなくなることがあります
引きこもりが続いている。
働いたとしても数日で体調が崩れてしまう。
面接に落ち続け、本人がますます落ち込む——。
親御さんとしては「このままで大丈夫なのか」「生活はどうなるのか」と不安になりますよね。
でも、この状況でいちばんつらいのは、本人も同じです。
今動けないのは“怠け”ではなく、疲れ切っているサインかもしれません。
週1回外に出られたら、それだけで立派な前進です。
この記事では、就労支援の制度を「暗記」するのではなく、相談の順番として整理します。
これが分かると、たらい回しが減り、親子の消耗も減ります。
働こうと思ったとき、最初の相談先はどこ?
結論から言うと、迷ったらまず 「支援の入口(司令塔)」に行くのがおすすめです。
いきなり就職活動(応募→不採用)を繰り返すと、自己否定が強まりやすいからです。
相談の入口は、大きく3つあります。
① 就職の窓口 ハローワーク
支援内容
- 求人検索・求人紹介(職業紹介)
- 応募手続き・職業相談・紹介状の発行
- 職業訓練(案内)など
ポイント
「仕事を探す・紹介してもらう」ことに関しては、まずここが基本です。
一方でハローワークが強いのは、求人紹介と応募手続きです。
「生活が崩れている」「不調が強い」といった状態を、日常的に支える役割は得意ではありません。
その場合は、就労移行支援などの福祉サービスと併用し、生活を整える支援(準備)+求人紹介(応募)を組み合わせると、無理なく前に進めます。
② 就職の“準備”の窓口 就労移行支援事業所
支援内容
- 生活リズムづくり
- 自己理解(特性理解・配慮事項の整理)
- 職場実習
- 応募書類作成・面接練習・面接同行 など
ポイント
一般就労を目指す人に向いた支援です。
「仕事を紹介してもらえる場所」と思われがちですが、就労移行支援が行うのは就職の準備と伴走支援であり、求人の紹介(職業紹介)は原則行えません。
※求人紹介(職業紹介)ができるのは、ハローワーク(公共職業安定所)など、法律に基づく機関・許可事業者に限られます。
③ 働く“場”の窓口 就労継続支援A型・B型事業所
支援内容
- 軽作業・事務補助などの作業機会
- 支援員による体調・生活面のサポート
- 日中の居場所とリズムづくり
- スキルの積み上げ
- (A型は雇用契約に基づく就労)
ポイント
一般就労が現時点で難しい人が、福祉サービスとして「働く練習ができる場所」です。
「いきなり就職は不安」「生活や体調が安定しない」という段階でも、働きながら整える/戻れる場所を持つという意味で、とても現実的な選択肢になります。
A型・B型はどちらが良い悪いではなく、“今の状態”に合うほうを選ぶことが大切です。
A型・B型・就労移行の違いは?
よくある誤解があります。
A型=軽い人
B型=重い人
ではありません。
実務で大事なのは、次の2点です。
- 雇用契約を結べる状態か?(通所の安定)
- 今必要なのは就職か?準備か?生活の立て直しか?
就労継続支援A型事業所とは(雇用契約あり)
A型は、事業所と雇用契約を結んで働く福祉サービスです。
雇用契約があるため、働いた分の給与が発生します(原則、最低賃金が適用されます)。
ただし「雇用=8時間勤務」という意味ではありません。
勤務時間は事業所や本人の状態に応じて、短時間から始め、段階的に増やすケースもあります。
A型が合いやすい目安(本人の状態)
- 朝の支度や通所が、ある程度の頻度でできる
- 指示があれば作業に取り組める(支援のもとでOK)
- 一般就労はまだ不安だが、まずは“雇用の形で働く経験”を積みたい
見学・面談で確認しておきたいポイント
- 出勤条件(週何日・何時間から可能か)
体調に波がある場合の調整余地も確認します。 - 欠席や遅刻が続いたときの支援
欠席が増えた場合、「すぐ退所」なのか「面談・支援計画の見直し」があるのか。
質問例:「体調不良が続いたとき、どんな支援や調整をしてもらえますか?」 - 仕事量を段階的に増やせるか(いきなりフル負荷にしない)
慣らし期間の有無、作業量の調整、休憩の取り方。
質問例:「最初の1〜2か月は、どんなペースで仕事量を増やしていきますか?」
ポイント
A型は“働く訓練”であると同時に雇用でもあります。
本人が安心して続けられるように、勤務時間・支援体制・欠席時の対応を事前に確認しておくと判断がしやすくなります。
就労継続支援B型事業所とは(雇用契約なし)
B型は雇用契約を結ばず、福祉サービスとして「働く機会」と「生活を整える支援」を受けられる場所です。
賃金ではなく工賃という仕組みで、作業に応じた金額が支払われます。
(工賃の額は事業所や作業内容・参加日数によって大きく異なるため、見学時に目安を確認すると安心です。)
そして、ここで大切なことがあります。
B型は「働けない人の場所」ではありません。
いまは就職やA型が難しくても、働き直すために生活と自信を整える場所です。
B型が合いやすい目安(本人の状態)
- 体調の波が大きく、通所が安定しない
- 引きこもり明けで、まず外出の練習が必要
- 対人負荷が大きく、配慮環境が必要
- 生活リズムが崩れており、就職活動が難しい
見学・面談で確認しておきたいポイント
- 少ない通所から始められるか(週1回など)
質問例:「最初は週1回からでも利用できますか?慣れてきたら増やせますか?」 - 休んだときに責めない支援があるか
質問例:「体調不良で休みが増えたとき、どのように関わってくれますか?」 - “できる工程”から始めて自己肯定感を回復できるか
質問例:「本人ができそうな作業から段階的に始められますか?苦手が強い場合は?」 - 「居場所」として安心できる雰囲気か
支援員の声かけ、利用者層、静かなスペースの有無。 - 見学時は、本人の表情が硬くなるか、少し緩むかも大切な判断材料です。
ポイント
いま必要なのは“頑張れる場所”ではなく、戻ってこれる場所であることがあります。
B型は「今できること」から積み上げ、次の選択肢(A型・就労移行・一般就労)へつなげる土台になります。
気になる事業所は、見学→体験利用をして「通える距離」「雰囲気」「支援の手厚さ」を確認しましょう。
就労移行支援事業所とは(就職に向けた準備)
就労移行は、A型・B型のような「働く場所」ではなく、一般就労に向けて働く準備を整えるための訓練・支援です。
生活リズムづくり、自己理解、実習、就職活動の伴走などを通じて、「働ける状態」をつくり、就職へつなげていきます。
支援内容
- 生活リズムづくり/通所習慣の定着
- 自己理解(得意・苦手、配慮事項の整理)
- PC・コミュニケーション等のトレーニング(事業所による)
- 企業実習(職場体験)
- 就職活動支援(応募書類、面接練習、面接同行など)
- 就職後の定着支援(一定期間)
ポイント
就労移行は「就職の準備の場」であり、就職先を紹介してくれる場所ではありません。
また、企業実習はとても重要ですが、「働いた対価として賃金が出る(アルバイト)」とは別物です。
実習はあくまで相性確認・経験の蓄積が目的で、原則として賃金は出ないと考えておくと安心です。
交通費についても自己負担となることが多く、昼食提供の有無も含めて事業所によって対応が異なります。
「行けばごはんが出る」「実習で収入になる」と期待してしまうと、後で落差が大きくなりやすいため、利用前に条件を確認しておきましょう。
就労移行が合いやすい目安(本人の状態)
- 一般就労を目指したい(または将来的に目指したい)
- 就活の進め方が分からない/一人で進めるのが難しい
- 特性理解・自己理解を整理して、配慮事項を言語化したい
- 実習を通じて「働けそうな環境」を見極めたい
見学・面談で確認しておきたいポイント
- 企業実習の内容(回数・期間・振り返り)
質問例:「実習は平均何回くらい行けますか?振り返りはどのように行いますか?」 - 実習・通所にかかる費用(交通費・昼食など)
質問例:「交通費の補助はありますか?昼食は出ますか?自己負担になる費用はありますか?」 - 定着支援の強さ(就職後が勝負)
就職後のフォロー頻度、企業との調整支援、困った時の相談先。 - 特性を企業に“翻訳して伝える力”があるか
配慮事項の整理、企業に説明する資料、面談同席の有無。
ポイント
見学の段階で、「実習は賃金が出るのか」「交通費はどうなるのか」「昼食は出るのか」を遠慮せず確認しましょう。
ここが明確になると、家庭内でも現実的に判断できます。
最初に理解したい「支援の地図」
障がいのある方の就労支援は、雇い入れ前(実習・求人・準備)から雇い入れ後(定着支援)まで、企業・行政・福祉が連携しながら進みます。
ここでは、全体像を「企業側から見た流れ」と「本人側から見た流れ」の2つで整理します。

雇い入れ前(実習・求人・支援)から雇い入れ後(定着支援)まで、企業・行政・福祉が連携しながら就労を支えています。
「どこに相談すればいいか分からない」のは当然です。支援機関には、それぞれ役割分担があります。
この地図を押さえると、相談の遠回りが減り、親子の消耗も減ります。
図を読むポイント(3つ)
1)まず、支援は大きく3系統に分かれます
本人側の流れで見ると、関係機関は大きく3つに分かれます。
A. 就職準備をするところ
- 就労移行支援事業所
- 特別支援学校、能力開発校 など
生活リズムや自己理解、職場実習を通じて「働ける形」を整えていきます。
B. 働く場所
- 一般企業
- A型・B型事業所
一般就労だけでなく、状態に合わせてA型・B型という選択肢も現実的に取り得ます。
C. 生活を支えるところ
- 福祉事務所
- 保健所
- 医療機関 など
生活・体調が崩れていると、働き続けることが難しくなります。就労だけでは解決しない部分を支える領域です。
2)混乱しやすい理由は「役割が似て見える」から
たとえば、就労移行も、ハローワークも、なかぽつも「就職を支援」します。
一見同じに見えますが、実際は得意分野が違います。
3)覚えておくと強い“役割分担”
ハローワーク=「求人(職業紹介)の正式ルート」
企業が求人を出す先として位置づけられるのがハローワークです。
就職を進めるうえで「求人(職業紹介)」の入口と捉えると分かりやすいです。
- 求人紹介(障害者求人を含む)
- トライアル雇用の制度
- 職業訓練の案内
- 就職後は定着支援へつなぐ(入口や連携)
ポイント
「仕事を紹介してもらう」機能は原則ここ(ハローワーク)が中心です。
「就労移行に行けば求人を出してくれる」という誤解が起きやすいので、ここは明確にしておくと安心材料になります。
障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)=「迷ったときの司令塔」
この図では、なかぽつが就労と生活の支援をつなぐ中心として整理されています。
就職準備や働き始めた後の支援は窓口が複数に分かれますが、なかぽつはその間に立って、次の役割を担います。
- 就労と生活をセットで支援する
- 医療・福祉・ハローワーク・企業をつなぐ
- 「どこに相談すべきか」を一緒に整理する
「いま何が一番困っているのか」「次にどこへ行けば良いのか」が整理できないときほど、最初の相談先として現実的です。
迷ったら、まず「なかぽつ」。たらい回しを防ぐ意味でも、強い入口になります。
就労定着支援=「働き始めてからの“支え”を確保する仕組み」
この図では、就職後(雇い入れ後)の支援として、地域障害者職業センターや就労定着支援が整理されています。
就職はゴールではなく、むしろスタートです。
「頑張って就職できたのに、数か月で疲れが出て続かなくなった」ということは珍しくありません。
そうした“崩れやすい時期”を支えるのが就労定着支援です。
- 職場での困りごとの整理(負担の正体を言語化する)
- 配慮の調整(企業との間に入り、伝え方を整える)
- 生活面の乱れが仕事へ影響する場合の連携(医療・福祉とのつなぎ)
「就職後も相談できる先を持っている」だけで、折れにくさが大きく変わります。
就労移行やハローワークを検討する段階から、就職後の相談先(定着支援につながるルート)もセットで確認しておくのが実務的です。
迷ったときの相談ルート(支援の地図の使い方)
支援の地図でお伝えしたいことは、「支援は一つではなく、役割が分かれている」ということです。
最初の相談先が合わないと、遠回りになったり、話がかみ合わずに疲れてしまうことがあります。
迷ったときは、いまの状況に合わせて入口を選ぶと整理がスムーズです。
- 迷いが大きい/生活や体調も不安定 → なかぽつ(司令塔として整理)
- 求人を探して応募したい → ハローワーク(職業紹介の窓口)
- 働く準備(訓練・自己理解・実習)をしたい → 就労移行支援(準備の場)
- 就職後が心配/続けられるか不安 → 就労定着支援(につながるルートを確保)
ポイント
一度で正解にたどり着く必要はありません。
「今いちばん困っていること」から入って、必要な機関につないでもらうのが現実的です。
まとめ:制度の違いより「順番」が大事
A型・B型・就労移行。制度の違いはあります。
でも、本当に大事なのはここです。
- いきなり就活で傷つかない
- 相談の司令塔を決める(なかぽつ等)
- 生活と就労をセットで整える
- 小さく始めて続ける
親御さんができるのは、子どもを変えることではなく、支援につながる“道”を整えることです。
